弟子が荼枳尼天を背負ってやってきた(13)

信じたくない匂いの話

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これから数回に渡って、弟子入り前の忘れられない体験について書いていこうと思います。
お付き合い頂ければ幸いです。

私が福岡県にある某総合病院で、心理士の研修を受けていた当時の話です。
たまたま用事があり、普段は通らない心療内科の外来の廊下を歩いていたときのこと。

午後4時を回り、外来患者様もまばらになっていました。

視界に入るのは、心療内科医の診察を終え、臨床心理士とのカウンセリングを待っている患者さまがお二人。

私がその先の研究室に資料を返却しに歩いているとき、すれ違う人はいませんでした。

にも拘わらずです。

私が研究室の方向へ進むと、すれ違いざまに線香の匂いがしたのです。

外来ですよ、外来。

私は学生時代、老人保健施設へ一年間清掃業務で通いました。
そこには入居者の方がお亡くなりになったときに安置される、霊安室というものがありました。

時折、御在室の時にはお線香の香りがしたものです。

それは嗅覚で納得がいきます。

私は軽く混乱しました。

そして後ろを振り返りましたが、やはりそこには人気のない午後の外来の廊下が伸びているだけ。
線香の香りは私を追い越し、ふっと消えていきました。

誰に話しようもない、私だけのささやかな体験でした。

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by masumi-inari | 2017-01-13 21:00 | 弟子が荼枳尼天を背負ってやってきた